はじめに
地方企業の経営を担う人材が圧倒的に足りていません。この記事では、地方企業が直面する経営人材不足の構造的な原因を整理し、採用・育成・外部活用の観点から具体的な解決アプローチを解説します。後継者不在率の高止まりや、地方拠点のマネジメント層の空洞化は、個別企業の問題にとどまらず、地域経済全体の縮小リスクにつながっています。
MK2が地方企業の経営幹部採用を支援する中で実感しているのは、 「人材がいない」のではなく「届いていない」ケースが大半だ ということです。都市部には地方での経営に関心を持つ人材が一定数いますが、情報の非対称性や企業側の発信不足により、マッチングが成立していません。
この記事のポイント
- 地方企業の経営人材不足は「採用力」ではなく「構造」の問題
- 都市部人材の地方移転ニーズは増加傾向にあり、活用余地がある
- 副業・顧問活用、段階的移住など柔軟なアプローチが有効
地方企業の経営人材不足──現状と構造的要因

地方企業の経営人材不足とは、事業承継・経営管理・新規事業推進を担えるマネジメント人材が地方に不足している状態を指します。この問題は少子高齢化や都市一極集中と密接に結びついています。
1-1. 後継者不在率が示す深刻度
帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査(2024年)」によると、全国の後継者不在率は約52.1%で、地方圏ではさらに高い傾向にあります。地方の製造業・建設業を中心に経営者の平均年齢は60歳を超え、次世代の経営を担う人材の確保が急務です。
1-2. 都市部との人材格差が生まれる3つの構造
地方企業が経営人材を確保しにくい要因は、以下の3つに集約されます。
- 情報の非対称性 -- 地方企業の求人情報が都市部の人材に届かない。大手求人媒体への掲載コストが割高で、地方中小企業は露出が限られる
- 報酬水準のギャップ -- 都市部の大手企業と比較すると年収で200〜400万円の差が生じるケースがあり、金銭面での訴求が難しい
- キャリアの不可逆性への不安 -- 「一度地方に行くと都市部に戻れないのでは」という心理的障壁が、転職検討者の最大のハードルになっている
1-3. 地域経済への波及影響
経営人材の不足は、個別企業の問題にとどまりません。地域の中核企業が事業承継に失敗して廃業すると、取引先・雇用・税収が連鎖的に失われます。2026年採用市場予測でも指摘されているように、人材市場全体の構造変化が地方経済に与えるインパクトは年々大きくなっています。
都市部人材の地方移転──変化する意識と活用戦略

近年、都市部のビジネスパーソンの間で地方移住やリモートワーク前提の働き方への関心が高まっています。この変化は、地方企業にとって経営人材を獲得する大きなチャンスです。
2-1. 「地方×経営」に関心を持つ人材の特徴
エグゼクティブ採用の経験から、地方企業の経営ポジションに関心を示す人材には共通の特徴があります。
- 40代前半〜50代前半 で、都市部の大手企業で部長・事業部長クラスを経験済み
- 「組織の歯車」ではなく、 経営全体に関与したい という動機が強い
- 家族の教育環境や生活コストの観点から、地方移住に前向きなライフステージにいる
採用現場で実際に見てきた傾向として、こうした人材は年収だけでなく「裁量の大きさ」「経営への直接的な影響力」を重視します。地方企業がこの点を訴求できれば、報酬ギャップを補う強力な差別化要因になります。
2-2. 段階的アプローチが成功率を高める
地方への完全移住をいきなり求めるのではなく、段階的に関係を構築するアプローチが有効です。
| アプローチ | 概要 | 適するケース |
|---|---|---|
| 副業・顧問 | 月2〜4日、リモート中心で経営課題に助言 | まず外部知見を取り入れたい企業 |
| 二拠点勤務 | 週2〜3日は現地、残りはリモート | 経営幹部候補の試用期間として |
| 完全常駐 | フルタイムで地方に移住・勤務 | 事業承継・CEO/COO就任 |
副業・顧問からのキャリア拡張でも解説しているように、副業や顧問としての関与から始め、相互理解を深めた上で常勤化するパターンが、定着率の面でも優れています。
2-3. 企業側が整えるべき受け入れ体制
都市部人材の採用を成功させるには、企業側の準備も不可欠です。
- 経営課題の言語化 -- 「何を任せたいのか」を具体的に整理する。曖昧な「右腕が欲しい」では人材は動かない
- 権限と裁量の明確化 -- 入社後の意思決定範囲を事前に合意する
- 既存組織との接続設計 -- 古参社員との摩擦を防ぐため、役割分担と報告ラインを明確にする
地方企業が取るべき3つの人材戦略

ここからは、地方企業が経営人材不足を解消するための具体的な戦略を3つに整理します。
3-1. 戦略1: エグゼクティブサーチの活用
地方企業の経営幹部採用では、一般的な求人媒体よりも、経営幹部の採用支援に特化したエグゼクティブサーチの活用が効果的です。特に以下の点で優位性があります。
- 非公開で現職中の経営人材にもリーチできる
- スキルだけでなく組織適合性も含めたマッチングが可能
- 地方ポジションに関心を持つ潜在層へのネットワークがある
経営人材の採用成功条件で詳しく解説していますが、経営幹部の採用では「スキルマッチ」だけでなく「カルチャーフィット」と「経営ビジョンの共有」が定着の鍵を握ります。
3-2. 戦略2: 社内人材の計画的育成
外部採用だけに依存するのはリスクがあります。中長期的には、社内の次世代リーダーを計画的に育成することが不可欠です。
- 経営リテラシー研修 -- 財務・戦略・組織マネジメントの基礎を体系的に学ぶ機会を設ける
- 越境経験の付与 -- 他社への出向、業界団体への参画、外部研修への派遣で視野を広げる
- 段階的な権限委譲 -- 小規模プロジェクトのリーダーから始め、意思決定の経験を積ませる
3-3. 戦略3: 外部プロフェッショナルの活用
常勤の経営幹部を採用する前段階として、統合経営支援のような外部リソースを活用する方法があります。人事制度の整備や中期経営計画の策定など、特定テーマに絞って専門家の知見を取り入れ、将来の常勤幹部採用に備えることができます。
よくある質問
Q. 地方企業が都市部の人材を採用する際、年収はどの程度必要ですか?
都市部の現年収から大幅ダウンを求めるのは現実的ではありません。ただし、生活コストの低さ(住居費が都市部の1/2〜1/3程度)を具体的に提示すれば、可処分所得では遜色ない条件を設計できます。裁量・経営参画の度合いなど非金銭面の訴求も重要です。
Q. リモートワーク中心で経営幹部は務まりますか?
週2〜3日の現地勤務とリモートを組み合わせるハイブリッド型は十分に機能します。ただし、初期の関係構築フェーズでは対面の重要性が高いため、勤務形態は企業の業種・組織文化に応じて柔軟に設計すべきです。
Q. 事業承継で外部人材を迎える場合、準備期間はどのくらい必要ですか?
副業・顧問として半年〜1年関与してから常勤化し、その後1年で経営権を段階的に移行する計2〜3年のタイムラインが現実的な目安です。
まとめ
地方企業の経営人材不足は、個別企業の採用力だけの問題ではなく、情報の非対称性・報酬格差・心理的障壁といった構造的な課題が絡み合っています。しかし、都市部人材の地方移転ニーズの高まりや、副業・顧問活用の普及など、解決の糸口は確実に広がっています。
「フルタイム×完全移住」に固執せず、段階的なアプローチで関係を構築すること。そして外部人材の活用と社内育成を両輪で進めることが、持続的な経営基盤の構築につながります。
MK2(エムケーツー)では、地方企業を含む経営幹部・プロフェッショナル人材の紹介を通じて、経営人材不足の解消を支援しています。企業の経営課題に応じた最適な人材をご提案します。まずはお気軽にお問い合わせください。
