はじめに
2026年も折り返しが近づいています。 上半期の採用市場は、生成AIの業務浸透とサプライチェーン再編の影響を強く受けました。 では下半期はどうなるのか。この記事では、2026年下半期の採用市場を業界別に予測し、人材の需給バランスと年収動向を解説します。
採用現場の実感として、企業の採用意欲は引き続き高水準ですが、「誰でもいいから採りたい」というフェーズは完全に終わりました。 特定のスキルセットを持つ人材への需要が集中し、業界ごとに明暗が分かれる構図が鮮明になっています。
2026年上半期の経営人材市場と比較しながら、下半期に向けた企業・個人双方の戦略をお伝えします。
この記事のポイント
- IT・SaaS領域は引き続き売り手市場だが、求められるスキルが「AI活用」軸に移行
- 製造業のDX人材需要が本格化し、年収レンジが上昇傾向
- コンサル・ヘルスケア業界で経営幹部層の争奪戦が加速している
業界別・人材需給の全体像──4業界の比較

需給バランスの構造的な変化
2026年下半期の人材市場を理解するには、業界ごとの需給構造を俯瞰する必要があります。 上半期は多くの企業が中期経営計画の見直しに着手しました。 その結果として、下半期は計画を実行に移すための人材確保が一気に動き出すタイミングです。 MK2が日々の経営幹部の採用支援を通じて得ている市場実感を、4つの主要業界で整理しました。
| 業界 | 人材需要 | 供給状況 | 年収レンジ変化 | 注目ポジション |
|---|---|---|---|---|
| IT・SaaS | 非常に高い | 不足 | 上昇 | AI事業責任者、CTO |
| 製造業 | 高い(急増) | 大幅に不足 | 上昇 | DX推進責任者、SCM統括 |
| コンサル | 高い | やや不足 | 横ばい〜上昇 | 業界特化パートナー |
| ヘルスケア | 高い(拡大中) | 不足 | 上昇 | 事業開発、薬事・規制対応 |
共通トレンド:「兼務型経営人材」への需要集中
業界を問わず共通しているのは、 単一機能の専門家よりも、複数領域を横断できる経営人材 への需要が集中している点です。 たとえば「財務×DX」「人事×事業開発」「営業×データ分析」といった組み合わせです。
採用現場の実感として、候補者の職務経歴書に2つ以上の異なる機能領域の実績がある場合、書類通過率が大きく変わります。 企業側も、専門性だけでなく「経営全体を見渡せる視座」を選考基準に明記するケースが増えています。
IT・SaaS領域──AI人材の「質」への要求が一段上がる

売り手市場は続くが、選別は厳しくなっている
IT・SaaS業界は引き続き売り手市場です。 エンジニア、プロダクトマネージャー、データサイエンティストなど、技術系ポジションの求人倍率は高止まりしています。 しかし上半期と比較すると、企業側の目線が明らかに変わっています。
業界関係者の間では「AI導入の経験があります」だけでは差別化にならないという認識が広がっています。 下半期に求められるのは、 AIを活用して事業のPLにインパクトを出した実績 です。
具体的には以下のような経験を持つ人材が、複数企業から同時にオファーを受ける状況が続いています。
- 生成AIを活用した業務プロセスの再設計と、定量的な成果(コスト削減率・生産性向上率)の実績
- AI関連の新規事業を立ち上げ、収益化まで導いた経験
- データガバナンスやAI倫理のフレームワーク構築をリードした経験
年収動向:CTO・VPoEクラスは上振れ傾向
IT・SaaS領域のCTO・VPoEクラスでは、年収レンジの上限が上昇傾向にあります。 採用現場で実際に見てきた事例として、AI活用の実績を持つCTOクラスの候補者に対して、企業が当初の想定年収を大幅に引き上げてオファーを出すケースが複数ありました。
年収800万→1200万の転職戦略でも触れていますが、年収を引き上げる最大のレバーは「希少性の高いスキルの掛け合わせ」です。 IT領域では「技術×経営」のスキルセットがまさにその条件に該当します。
製造業──DX人材需要が本格化し、年収水準が変わる

サプライチェーン再編がDX投資を加速
地政学リスクの高まりを受け、製造業ではサプライチェーンの再編が進んでいます。 生産拠点の国内回帰やASEAN地域への分散、部品調達先の多元化。 こうした動きに伴い、生産管理・調達・物流のデジタル化が急務となっています。
経済産業省が推進するDXレポートでも指摘されている通り、日本の製造業はDX人材の確保が構造的な課題です。 特に、現場のオペレーションを理解しつつデジタル技術を活用できる「橋渡し人材」が圧倒的に不足しています。 下半期は、この課題がさらに顕在化すると予測しています。
製造業が提示する年収レンジの変化
注目すべきは、 従来IT業界と比較して年収水準が低かった製造業が、DX人材の獲得のために年収レンジを引き上げている 点です。
採用現場で実際に見てきたケースとして、大手製造業がDX推進責任者のポジションで、IT企業出身者に対してIT業界と同水準以上の年収を提示する事例が増えています。 製造業の安定性と、IT業界水準の年収という組み合わせは、候補者にとって魅力的な選択肢になっています。
求められる人材像
製造業のDXポジションで特に評価が高いのは、以下の経験を持つ人材です。
- 基幹システム(ERP)の導入・刷新プロジェクトをリードした実績
- IoT・センサーデータを活用した生産最適化の経験
- サプライチェーン全体のデジタル化を推進した経験
IT業界からの転職を検討している方は、キャリア面談で製造業DXポジションの最新動向をお伝えしています。
コンサル・ヘルスケア──経営幹部層の争奪戦が加速

コンサル業界:業界特化型パートナーの獲得競争
コンサルティング業界では、ジェネラリスト型のパートナーよりも、 特定業界に深い知見を持つパートナー の需要が高まっています。
業界関係者の間では、クライアント企業のDX・AI活用案件が増加する中で、技術と業界知識の両方を持つコンサルタントの不足が深刻化しているという声が多く聞かれます。 エグゼクティブ採用の経験から言えば、コンサルティングファームのパートナー採用は、候補者側が業界を選ぶ立場にあるケースも珍しくありません。 年収水準は横ばいから微増ですが、業界特化型のシニアポジションでは高水準のオファーが出る傾向にあります。
ヘルスケア業界:事業開発人材の需要急増
ヘルスケア業界は、デジタルヘルスやバイオテクノロジーの成長を背景に、事業開発人材の需要が急拡大しています。
経営人材の採用成功条件でも解説していますが、ヘルスケア業界の経営幹部採用で成否を分けるのは「業界特有の規制環境への理解」です。 薬機法・医療機器規制に精通しつつ、事業開発やM&Aの経験を持つ人材は、極めて希少性が高い状態が続いています。
両業界に共通する年収トレンド
コンサル・ヘルスケアともに、 マネージャークラス以上の年収は上昇基調 にあります。 特に40代前半で業界特化の専門性と経営経験を兼ね備えた人材は、複数社から同時にアプローチを受けるケースが目立ちます。
よくある質問
Q. 2026年下半期に転職するなら、どの業界が狙い目ですか?
一概には言えませんが、DX人材として製造業への転職は検討に値します。IT業界と同水準以上の年収を提示する企業が増えており、かつ事業の安定性が高い点が魅力です。ただし、業界知識のキャッチアップは必要になるため、早めの情報収集をお勧めします。
Q. 年収アップを実現するために、下半期に向けて準備すべきことは?
最も効果的なのは、AI活用やDX推進の実績を具体的な数字で語れるようにすることです。「何を導入したか」ではなく「どのような成果を出したか」が問われる市場です。現職での実績づくりと並行して、市場の年収水準を把握しておくことも重要です。
Q. 経営幹部クラスの採用は、下半期に増えますか?
採用現場の実感として、下半期は例年、次年度の体制構築を見据えた経営幹部採用が活発化する時期です。2026年も同様の傾向が見込まれます。特に、中期経営計画の見直しに伴うCxOクラスの採用は下半期に集中しやすい傾向があります。
まとめ
2026年下半期の採用市場は、業界ごとの需給バランスに大きな差が生まれる見通しです。 共通しているのは、 「複数領域を横断できる経営人材」への需要が一段と高まっている という点です。
企業にとっては、年収レンジの見直しや選考プロセスのスピードアップが採用成功のカギになります。 個人にとっては、自身のスキルの希少性を客観的に評価し、市場価値を最大化できるタイミングを見極めることが重要です。
MK2(エムケーツー)では、IT・製造・コンサル・ヘルスケアなど業界を横断した経営幹部・プロフェッショナル人材のご紹介を行っています。 下半期の採用戦略や転職タイミングについて、最新の市場動向をもとにアドバイスいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。